マウイ島・ラハイナの今|山火事からの復興を支える取り組みとは
ハワイ・マウイ島にあるラハイナは、その豊かな歴史と古きハワイの美しい景観で長年愛されてきた街。しかし、2023年8月に発生した山火事により、ラハイナは大きな被害を受けました。現在は復興に向けた取り組みが進められています。
ちょうど1年が経過した今、この記事ではラハイナの歴史的背景、山火事による被害の詳細、そして今後の復興に向けた取り組みについてみていきます。
ラハイナの歴史
ラハイナには「残った太陽」という意味があり、温暖な気候と美しいサンセットで知られています。そんなラハイナはハワイの歴史を語る上でとても重要な場所。
ハワイ王国のカメハメハ大王が19世紀初頭にハワイ諸島を統一した後、ラハイナは首都として選ばれ政治の中心地となりました。この時期、ラハイナは捕鯨業の中心地としても栄え、19世紀半ばには太平洋を行き交う多くの捕鯨船がラハイナ港に寄港。捕鯨船員たちがフロントストリートに集まり、バーや宿泊施設が軒を連ねるこの通りは活気に満ちていました。
また、ラハイナには宣教師たちも訪れ、教育や宗教の普及に貢献しました。ラハイナ砦やバニアンツリー公園など、当時の繁栄を今に伝える歴史的建造物が多く残っているのは、この時代の名残です。
20世紀に入ると捕鯨業が衰退し、ラハイナは観光業を産業の中心とするようになりました。特に第二次世界大戦後、ラハイナはハワイ諸島の観光拠点として再び注目を集めました。歴史的な価値を保ちながら、フロントストリートは多くの観光客を迎える商業エリアへと生まれ変わり、レストランやアートギャラリー、ショップが並ぶ人気の観光地となりました。
またラハイナはハワイにおける捕鯨、パイナップル、砂糖産業の中心地としての役割も果たし、西洋文化の影響を強く受けた場所でもあります。移民たちが上陸し古代の聖地が存在するラハイナは、ハワイ王国の首都としての栄光とともに、戦い、破壊、そして再生の歴史を経てきたのです。
ラハイナの過去には、王族の輝かしい歴史や歓楽と祝賀の場であった時代があり、その豊かな歴史と文化は、現在も多くの人々を魅了しています。
ラハイナで起きた山火事
2023年8月に発生したラハイナの山火事は、街に甚大な被害をもたらしました。急速に広がった炎は歴史的建造物や地元住民の住宅を次々と飲み込み、フロントストリート沿いの多くの建物も失われました。象徴的なバニアンツリー公園も深刻な被害を受け、ラハイナの歴史と文化にとって大きな損失となりました。
マウイ郡消防署によると、2023年8月8日の真夜中過ぎに強風が複数の火災を引き起こし、特にラハイナにおいては突風の速度が時速60マイルに達し、乾燥した夏の気候や低湿度、そしてハリケーン・ドラによる強風が火災を悪化させました。
連邦政府当局の発表によれば、被害額は55億ドルに達し、2,200以上の建造物が破壊されました。これは、過去5年間で米国において最も壊滅的な被害の一つとされています。100人が命を落とし、多くの住民が避難を余儀なくされ、街全体が深い悲しみに包まれました。
ラハイナの復興と再建計画
ラハイナの復興を加速するため、マウイ郡は建築許可の手続きを迅速に進めるための新しいオフィスを2024年4月に開設。このオフィスでは、500戸以上の新しい住宅を建設するためのプロジェクトがサポートされる予定です。これにより、山火事で家を失った多くの住民が、できるだけ早く再建を始められるようになります。
現在でも3,000人以上の住民がホテルなどで避難生活を送っており、仮設住宅での生活が続いています。しかし、建築許可の手続きが遅れているため、再建作業は思うように進んでいないといいます。
建築許可の遅延は、マウイ郡が抱える長年の問題であり、特に今回の大規模な復興プロジェクトにおいて、その影響が顕著に現れています。許可の承認プロセスが遅いことに加え、マウイ島の建設市場はすでに供給が追いつかない状況で、建設コストが本土と比べて約40%も高騰。これは、資材の供給が限られていることや、労働力が不足していることが主な原因です。
それでも、希望はあります。ハワイ州や連邦政府からの支援が強化され、ブライアン・シャッツ上院議員などの働きかけにより、連邦政府からの追加資源が確保されています。これらの支援により、マウイ郡は今後の復興に向けて少しずつ前進しているのです。
ラハイナの復興には時間がかかるかもしれませんが、適切な資源とサポートがあれば確実に前に進むことができるでしょう。
ラハイナの復興を支える観光
未だ、ラハイナの街に立ち入ることはできないものの、ハワイ州知事のジョシュ・グリーン氏はマウイ島の観光業が山火事の影響から回復しつつあることを強調しました。
特に西マウイ地域の観光再開が、島の経済と住民の生活に大きな影響を与えているといいます。観光業はマウイ島の雇用の85%を支えており、観光客が島の復興を支援する重要な存在となっているのです。
観光客の復興支援|ボランツーリズムの役割
マウイ島への旅行が回復する中で、観光客が島の復興を支援するための新しい方法が模索されています。
そこで今注目されているのが、観光とボランティア活動を組み合わせた「ボランツーリズム」。マウイ島を訪れる旅行者が滞在中にボランティア活動に参加することで、復興支援に貢献することができます。ボランティアには次のようなものがあります。
- Pacific Whale Foundation
マウイ島でビーチクリーンアップを実施し、ゴミの収集と報告を行っています。観光客もこの活動に参加し、美しいビーチを守る手助けができます。 - Hawaii Wildlife Fund
絶滅の危機に瀕しているウミガメの保護活動を行っています。観光客は、ウミガメの子ガメが無事に海にたどり着くよう手助けする活動に参加することができます。 - The Blue ʻĀina Reef Cleanup
マウイ島周辺のサンゴ礁の清掃活動を行い、海洋生物を保護することに尽力しています。観光客もこの活動に参加し、海の生態系を守ることができます。 - ケアリア・ポンド国立野生生物保護区(Keālia Pond National Wildlife Refuge)
マウイ島中南部に位置するこの保護区では、野生生物の保護活動が行われています。ビジターセンターや温室、生息地の修復など、さまざまなボランティアの機会があります。 - マラマ・ハワイ・プログラム
このプログラムでは、ビーチの清掃や原生樹木の植樹などを行っています。参加者は、ボランティアとして参加することで、参加ホテルの割引や無料宿泊の特典を受けることができます。
マウイ島の観光を楽しむだけでなく、こうしたボランティア活動に参加することで、地元コミュニティの再建に積極的に関わることができます。
マウイ島のお店や企業を支援
観光客がマウイ島を訪れる際に地元のお店や企業を支援することも、復興支援になります。観光客の消費活動は、地域経済の再建に直接的に貢献することになるからです。
以下のようなプラットフォームで提供している情報を通じて、地元のビジネスをサポートする手段を見つけてみてください。
- Maui Nui First
マウイ島全土のローカルビジネス、アクティビティ、製品、サービス、飲食業者を紹介しており、観光客が地元企業をサポートするための情報を提供しています。 - Pop Up Mākeke
マウイ島の業者から直接商品を購入できるオンラインプラットフォームで、どこからでもマウイ島を支援することができます。 - Kuhikuhi
ハワイ先住民が経営するビジネスを紹介し、観光客がそれらを支援するためのリストを提供しています。
さらに、オアフ島ホノルルで毎年8月に開催される「メイド・イン・ハワイ・フェスティバル」は、ローカルフードやファッション、装飾品、ジュエリーなどが展示され、マウイ島からもベンダーが出店します。山火事発生直後に開催された2023年のフェスティバルでは、マウイ・ストロング基金に58,000ドル以上の寄付金が集まり、復興支援に役立てられました。
マウイ・ストロング基金への寄付で復興支援
マウイ島を訪れることができない場合でも、マウイ・ストロング基金への寄付を通じて山火事で被害を受けた住民や企業の復興を支援することができます。
マウイ・ストロング基金は、これまでに1億ドル以上の助成金を提供し、島の復興活動を支えています。基金の公式ウェブサイトでは、寄付によって支援をした具体的なストーリーを読むことができ、寄付者は自分の支援がどのように役立っているかを知ることができます。
最後に
その豊かな歴史と古きハワイの美しい景観で愛されてきたラハイナ。2023年の山火事はこの街と人々に大きな被害をもたらしました。未だにラハイナの街に立ち入ることはできませんが、ラハイナのコミュニティはこれまでも数々の困難を乗り越えてきたように、今回も強い団結力で復興に向けた歩みを進めています。
私たちも観光客として、この街の歴史と文化を守るために大切な役割を果たすことができます。ラハイナを訪れ地元の復興に貢献することで、再びその魅力と美しさを取り戻す手助けができるでしょう。未来に向けて、ラハイナが力強く進んでいくことを願っています。
参照:
Lahaina | Go Hawaii
Maui wildfires: Facts, FAQs, and how to help | World Vision
Hawaii officials aim to help Lahaina rebuild after wildfires ravaged historic town – CBS News
Maui Fire Update One Year Later: Lahaina Rebuild in Focus | CoreLogic®
Maui Tourism Continues to Rebound After Devastating 2023 Wildfires | News, Sports, Jobs – Lahaina News