ハワイの幸福度は全米トップクラス!物価高でも幸せを感じる理由とは
ハワイは物価が上昇中。その一方で、給料や賃金が追いついていないと言われています。そのため、多くの人々が他の州に移住しており、ハワイは毎年人口減少のトップにランクイン。
ハワイの経済成長率(GDP)も本土西部の他の州より低く、多くの住民が経済的に困難な状況に直面しています。住民の10人に4人以上が経済的に苦しい状況にある、という調査結果もあるほど。
しかし、見落とされがちですが、唯一ハワイがうまくいっている分野があります。それは、人々の幸福度が非常に高いこと。
今回は、ハワイの経済状況と、物価が高くても幸福度が高い理由について解説します。
ハワイの経済状況と人口減少
ハワイは、全米の中でも特に物価が高い地域の一つです。住宅、食品、日用品の価格が高騰しており、観光業に依存する経済構造もこれに拍車をかけています。観光業は国内外の経済状況によって左右されますし、パンデミックのような外部ショックに対しても脆弱です。
このような経済状況下で、住民の給料や賃金が物価上昇に追いつかず、多くの住民が生活費の負担に苦しんでいます。
その結果、多くの住民がより生活費の安い本土へ移住しており、ハワイは毎年人口が減少。これにより、労働力不足や地域社会の衰退といったさらなる問題が生じています。
参照:
Hawaii’s Population Drain Outpaces Most States — Again
GDP by State
ハワイは幸福度ランキングでは上位
一方で、ハワイの幸福度は全米トップクラス。2021年のシェアケアの調査では、ハワイはマサチューセッツ州に次いで幸福度第2位にランクイン。ギャラップ社の調査でも、ハワイは常にトップ10にランクインしています。
これは一見矛盾しているように見えますが、ハワイの住民は経済的困難にもかかわらず、高い生活満足度を感じているということを示します。
この現象は、単に物質的な豊かさだけでなく、精神面など他の要因が幸福度に大きく寄与しているということです。
参照:
Sharing is caring: A better index for insights & impact
Hawaii Tops U.S. in Wellbeing for Record 7th Time
ハワイの幸福の要因
ハワイ大学経済研究機構が2019年に発表した「Drivers of well-being in Hawaii|個人とコミュニティの影響の定量化」と題された論文は、ギャラップ社のデータを分析し、ハワイにおける幸福の人口動態を示しました。
論文の共著者であるイネッサ・ラブ教授の研究によれば、ハワイの高い幸福度の背景には、強力なコミュニティサポートと美しい自然環境があると言います。
ハワイでは、家族や友人との強い絆、地域社会のサポートが深く根付いています。また、ビーチでのバーベキューやアウトドア活動が容易にできる環境は、住民のストレスを軽減し、心身の健康を促進。
さらに、美しい自然環境や温暖な気候は、住民に安らぎと幸福感を与える重要な要素です。このようなことから、たとえ経済的に困窮していたとしても、生活の質が大いに向上する可能性があります。
実際に、ハワイでは経済的に苦しい状況にあっても、他の州と比べて恵まれていると感じる人が多いことが調査で明らかになりました。
幸福経済学とその限界
GDPは経済成長の指標として広く用いられていますが、これだけでは国民の幸福度を完全に測ることはできません。
ハーバード・ビジネス・レビューに寄稿したジャーナリストのジャスティン・フォックス氏は、18世紀のジェレミー・ベンサムから1968年のロバート・F・ケネディまで、経済学者や政策立案者が幸福の経済学に関する議論を続けてきたと指摘しています。
ケネディは、「GDPは国民の健康、教育の質、遊びの喜びを保証するものではない」と述べ、経済的幸福の尺度としてのGDPの限界を強調。現代では、ハッピー・プラネット指数や世界幸福度報告書など、幸福度やウェルネスを測る新しい指標が注目されています。
ハワイのGDPは本土西部の州より低いですが、それが国民の幸福度と必ずしも連動するわけではないのです。
参照:The Economics of Well-Being
所得と幸福の関係
リチャード・イースタリンのパラドックスは、国の所得が増えると幸福度も上がるが、一定のレベルに達するとそれ以上の幸福度の増加は見られなくなるとしています。
つまり、基本的なニーズが満たされた後では、収入の増加が幸福度に与える影響が限定的であることを示しています。
例えば、発展途上国では生活の質が急速に向上することにより、住民の幸福度が大幅に上昇しますが、豊かな国では収入の増加による幸福度の向上が難しくなります。
ハワイにおいても、基本的なニーズが満たされた後は、収入以外の要因が幸福度に大きく影響するということが言えるのです。
ハワイの「エリア・プレミアム」
ラブ教授とフィリップ・ガーボーデン氏の研究によれば、ハワイでは一般的に女性の方が男性よりも幸福度が高く、高齢者は若年者よりも幸福度が高いことが示されています。
また、学歴や雇用は幸福の重要な指標であり、結婚していることや雇用されていることも幸福度に寄与するとのこと。
特に、カイルアやワイアラエ、カハラ、ハワイカイ、カイムキといった裕福な地域では、ビーチへのアクセスや自然環境の美しさが住民の幸福度を高めていると言います。
これは「エリア・プレミアム」と呼ばれる効果で、特定の場所に住むことが人々を幸せにする要因となっているとのことです。
恵まれた天候と美しいビーチや山々などの自然に囲まれ、独自の文化が根付いたハワイは一種のブランド。ハワイの住人たちは、自分の住む土地を誇りに思っています。
ハワイの経済政策と幸福度の向上
ハワイ大学経済学部名誉教授のサムナー・ラ・クロワ氏は、政府が経済政策を通じて単に所得を増やすだけでなく、文化活動や教育、社会とのつながりを促進することが重要だと述べています。
生活の満足度を高めるためには、住民が社会の一員であると感じられる環境を整えることが必要です。これには、失業対策や教育機会の提供、コミュニティ活動の支援などが含まれます。
政府がこれらの側面に注力することで、住民の全体的な幸福度をさらに向上させることができるでしょう。
最後に
ハワイの住民は経済的な困難に直面することもありますが、美しい自然環境や強いコミュニティの支えがあるため、幸福度が高いと言われています。
自然の恵みや地域コミュニティとの繋がりを通じて、多くの人々が充実した生活を築いているハワイ。
ハワイを訪れる際には、幸福度の高いハワイの住民との交流を通じて生きる本質を学ぶことができるかもしれません。彼らの暮らし方は、訪問者に深い洞察をもたらしてくれるでしょう。
参考:
Hawaii May Not Be The Richest State, But It Is One Of The Happiest
Hawaii Community Foundation